理容業界の現状と未来

現在、美容業界・理容業界は戦国時代といってもいいほど店舗が立ち並んでいます。
広島県内でも特に広島市福山市呉市廿日市市と市街地では数分歩くとお店があり、また数分歩くと別のお店があるといった飽和状態が続いています。

美容所は全国では毎年約2000件ずつ増え、2008年には22万件の大台を突破し、現在も増えています。逆に理容所は毎年微減傾向で、2007年から1000件単位での減少が続いています。
参考数値として、理美容室の件数はコンビニ件数の約8.5倍もあり、どこにでもあって便利なコンビニを考えるとその件数の多さが容易にイメージできます。
美容師、理容師になった以上、将来は独立したいと思う方が非常に多いと思います。
実際に美容室の増加傾向を見ると年々増加しています。

夢を叶え、美容室・理容室を開業された方は全国で年間約13,000人以上で推移しています。
しかし、その一方で年間12,000件を超える美容室・理容室が廃業に追い込まれているのも事実です。
さらに、美容師国家試験の合格者の減少もこれからの問題になるでしょう。
美容国家試験の合格者は2004年の合格者24,527人をピークに、現在では15,000人前後まで減少してしまっています。理容師の合格者は1000人前後です。
合格人数だけを見ると少なくないように感じる方もいらっしゃると思いますが、美容・理容業界は離職率が非常に高い業界です。免許だけ取得して、美容師・理容師の仕事をしない方もたくさんいらっしゃいます。
このまま合格者の減少が続けば、人材難に伴い、後継者の育成も美容・理容業界を取り巻く課題の一つになるでしょう。

厚生労働省健康局生活衛生課から発表されている「経営者の年齢」というデータを見ると、理容業経営者の85%が50代以上となっています。
おそらく、後継者問題という課題に取り組まなければならない店舗が増えてくることは間違いないでしょう。

組合では新たに子供客の獲得と将来の理容師後継者を創出するため、幼児から高校生を対象とした企画、バーバー・キッズランド戦略を全国規模で展開し、理容の魅力と職業としての可能性を実感してもらい、業界参入の動機を行う予定です。
そしてもう一つ。全国の理美容室において黒字店舗はわずか9%というデータがあります。残りの91%は損益分岐点か赤字で利益がでていないのです。
技術だけでお客様が来る時代はもう終わりました。これからの理容室経営は客観的な数字に基づき緻密に計画された施策を実施する「戦略的経営」が大切になります。
パソコンを活用しての顧客管理、会計管理もその一つの方法です。

すべての業界で言えることですが、新しい変化に対応できなかった店舗は淘汰され、うまく変化に対応できた店舗は生き残る、その繰り返しで今の業界があります。理容業界はこれまでも多くの時代の変化に耐えぬいてきた強い業界です。
現在の多くの課題や時代の変化に対応していくために、一時期の美容師ブームのような魅力的な業界に変化させていく必要があるでしょう。
理容室単体では「戦略的経営」を積極的に取り組み、業界全体としてはマスメディアやソーシャルメディアの力を利用し、若者が理容師になりたいと思える環境作りも必要になるのではないでしょうか。