「はっけよい残った!残った!」行司のかけ声でぶつかり合う子供たち。わんぱく相撲大会の始まりだ。元気よく土俵の上で子供達がぶつかり合う。相手を押して突き出したり、勢いが余って自分から土俵を割ったり、回しに手をかけ豪快に投げる子供もいた。しかし、初めて参加する子供は何をどうすればわからない。土俵の下から大きな声で大人達がアドバイスするが、ただ突っ立っているだけで相手にされるがままで、何をどうしていいかわからない。
その子達は“相撲”を知らないのだ。私の子供も恥ずかしながら後者であった。為す術もなく相手にされるがままで、1次リーグ3連敗の完敗で敗退。決して体格が小さい訳でも、力が無いわけでもない(私をご存じの方はうなずいている事と思うが・・・アハハ!)
現代の子供達は外遊びをあまりしない。山や川へ行ったり、空き地で遊んだりする子供はあまり見かけない。家の中でゲームやカード、DVD鑑賞などで遊んでばかりだ。私が子供の頃にも相撲大会は行われていたが、誰に教わるわけでもなく遊びの中で“相撲”を覚えたような気がする。毎日、泥んこになって日が暮れる迄、遊び回り、その遊びの中で学ぶ事がとても多かった。人間関係はもちろんのことだが、“考える”“工夫する”という事を学んだ。現代の子供はすべてにおいて、親や先生が安全な土俵を用意し“はいどうぞ”と子供達に用意してやる。子供達はなんの苦労もなく与えられた土俵で生活をしていく。はたしてそれでいいのだろうか?土俵から落ちそうになったら背中を押し返してやり、こけそうになったら手をさしのべてやる。もちろん大きな怪我をしないよう見守ってやる事も必要だが、少しくらいのスリ傷や体にドロがつくことは人生において必要な経験だと思う。それを防ぐための工夫や努力を積み重ねていくことで子供達は成長していく。必要以上の手助けはかえってマイナスだ。土俵にはい上がる姿を見守ってやる勇気が必要だ。
今年こそリベンジだ!大会前に庭に円を描き、私が見守る中、兄弟で相撲の練習をした。体格も力も勝る兄に何度も投げ飛ばされる。私は「回しを持って踏ん張れ!」そうアドバイスしたがやはり最後には投げ飛ばされてしまう。悔しくて泣く弟。「がんばれ!」激を飛ばしてやる。そしてついに兄に勝つ瞬間がおとずれた。回しでは無く足を抱えたのだ!「そうだ!それだ!」兄を転かして自慢げに微笑む弟。
そして大会当日、自信に満ちあふれた弟は、全戦全勝の完全試合で見事横綱に輝いた。泥まみれになり泣きながら自分で工夫をして掴み取った勝利である。
少し成長した子供の姿に微笑みながら、この先も色んな事に挑戦していく姿を見守っていってやろうと思う自分がそこに居た。
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